腹痛(大塚敬節著 より抜粋)
この方は桂枝茯苓丸を用いるような場合で、便秘し、急迫の傾向のあるものに用いる。この方を用いる重要な目標に小腹急結とよばれる腹証がある。少腹急結とは左腸骨窩に表在性の索条物をふれ、これを圧するととびあがるような痛みを訴える。古人はこの腹証を小腹急結とよび瘀血の徴候とした。
月経困難症でも、少腹急結の状があって、便秘し、疼痛激甚の者には桂枝茯苓丸よりもこの方がよい。
産後の腹痛で、悪露の下るたびに、しめつけられるように痛むものにこの方を用いることがある。もし疼痛がいつまでも、じわじわとつづき、痛むところを手で按圧して、反って気持ちよく感ずるものは虚痛と古人がよんだもので、当帰建中湯の証である。もし按圧して反って疼痛の強くなるものは、桂枝茯苓丸または桃核承気湯の証である。
流産のあとで急に心下に突き上げてくるように痛み、息もしにくいというようなものには桃核承気湯を与えるがよい。産後や流産後にはよく桃核承気湯の証が出るものである。